安部潤さん、安部和奏さんインタビュー
「良い意味で新品とは違う音の丸みを感じる」

完成したピアノを前に
左から、作業を担当した技術者の馬場政法。安部和奏さん、安部潤さん、飛田泰一横浜センター長
── 今回『ヤマハリニューアルプラン』を行なった<YAMAHA GC1SN>を選ばれた時期、理由について教えてください。
安部潤 2004年ですね。ちょうどその頃、家を新築して、練習のためのアコースティックピアノを家に置きたい、できたらグランドピアノで、と考えていて、いくつか検討した中で<YAMAHA GC1SN>を選びました。ポイントはいくつかあるのですが、大きかったのはサイレント機能がついていたことです。これがあることで時間帯などを気にせず弾くことができますから。
── 『ヤマハリニューアルプラン』によって再生されたピアノを弾いてみた、率直な感想を聞かせてください。
安部潤 まず見た目が本当に感動するくらいに綺麗ですよね。これ本当にあのピアノ?というくらいに。弾き心地に関していうと、良い意味で新品のピアノとは違う丸みを感じました。実は今回再生を行なっていただく上で心配していたことがあって、それは音がリセットされるんじゃないか、ということ。ピアノって購入して弾き込んでいくことで自分なりの音になっていくじゃないですか、育つというか。再生によっていろんなバランスが整えられることで「それがなくなってしまうのかな」なんて思っていたんですが、今、弾いてみると、その個性は残った状態で整えられていて、「なるほどこれがリニューアルってことなんだな」と思いました。
── 最近はもっぱら和奏さんが弾くことが多いということでしたが、和奏さんの印象はどうでしょう?
安部和奏 再生以前のピアノには音の広がりという点で若干の不満というか、「伸びないな」と思う点がありました。それが今、弾いてみると倍音がすごく美しく鳴ってくれるのでびっくりしています。サスティンペダルを踏んだ時の音の伸び方、広がり方が良くて、それでいて基音が崩れていないので、演奏していてすごく気持ちが良いです。
── 安部さんのピアノは状態が良く、今回の再生工程ではほぼ部品交換などを行わず、既存のモノを清掃、調整することで仕上げています。
安部潤 このピアノで作品のための録音などをすることはなかったので、その意味ではメンテナンスは疎かにしてたんじゃないかと思うので、まずは「状態は良かった」と言っていただけてプロとしては恥をかかなくて済んだかなと(笑)。その上で、今回、部品交換をしていないのに音がこれほど向上するというのにびっくりしました。弦なんかピカピカだったので、てっきり張り替えたのかなって思っていました。いたずらに部品を取り替えちゃうわけではなく、使える部分は丁寧に再生して活かしていく、そのことがさっき言った音の丸みにもつながるんでしょうね。
── これを機にメンテナンスに対する意識に変化は出てくるでしょうか?
安部潤 再生に関するお話をお聞きして、実際にピアノを見て弾いて、その美しさを目の当たりにすると、それはやっぱり「大切にしなきゃ」と思いますよね(笑)。ただ一方で、私のピアノが比較的良い状態だったということから、基本を守っていれば良い。過度に神経質になる必要はなくて最低限のことをしっかりやることが大事なんだなと再認識しました。
── 和奏さんはどうでしょう?
安部和奏 こうした最高のメンテナンスを施したピアノが返ってくることでよりピアノへの愛着が湧きますね。今回、再生技術を目の当たりにして、その技術の高さにびっくりしましたし、ピアノにとってそうしたメンテナンスがいかに重要かってことが身に沁みて分かりました。外装のキズがけっこう多かったという指摘を受けて、子どもの頃にチャンバラなどでピアノの下に潜り込んで遊んでいた自分としては思い当たる節が多くて(笑)。ピアノには本当に申し訳ないことをしたな、って今、思っています。大切にします。
安部潤
音楽プロデューサー、アレンジャー、キーボードプレイヤー
3歳より、ピアノ講師である母のもとピアノを始め、中学では吹奏楽部でトランペットを担当。92年より上京、作編曲家・サウンドプロデューサーとして、J pop、Jazz Fusionシーンにおいて数多くのレコーディング、ライブツアーに参加、また映画、イベント、またテレビやラジオのCM音楽など、多岐に渡るジャンルの音楽を幅広く手がけている。「初⾳ミク」のLA公演、タイのジャズフェスへの自己グループでの出演、中国の国民的アーティストの楽曲の編曲など、海外での活動もめざましい。2016年には映画「さらばあぶない刑事」の音楽を担当。また、LAやNYレコーディングを含むJazz Fusion系のソロアルバムを3枚リリースしている(最新作、「Walk Around」Sony Music)。昭和音楽大学非常勤講師
安部潤公式ページ
安部和奏
ピアニスト、キーボーディスト、ベーシスト
2002年生まれ、3歳からピアノを始め小学生の時に作曲を始める。音楽高校に進学後17歳で初リーダーライブを開催する。現在は都内各所のライブハウスでピアニスト、キーボーディスト、ベーシストとして活躍中。